狂望


                                            すいません、またやってしまいました。
                                            死にネタです。











                                                       ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





・・・・・泣き声が聞こえる・・・・・
・・・・・誰だ・・・・?誰かそこにいるのか?





                                                       ・・・・・・・・・・・・・・・・





・・・・・誰か・・・・・いや酒を飲み過ぎた故だろう・・・・・この声が私に聞こえるなど・・・・・
聞こえるはずなど・・・・・





                                                       ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





・・・・・ありえぬ・・・・・
それともお前、あの世から、この私に会いに来たのか・・・・
いや、それこそありえぬな。私を愛してもおらぬのに、お前が来るはずがない。
お前、そこから見ておるのか?何処までも青いその瞳で、私が為して来た今までの醜態を?
その溺れてしまいたい程青い瞳で、私が屍となったまま生きているのを眺めて嗤っているのか?




・・・・・おらぬのか・・・・・・・





                                                       ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





またお前の泣き声が聞こえる・・・・・
それともこれは私の良心の悲鳴か?
そんなものはもう何処にもないぞ。お前を失ったときに棄てた。
どんな女も抱けなくなった。良心とやらが欠片もあれば、子の一人も出来ようがな。
はじめは姉上も抱いたぞ?どのように抱いたか教えてやろうか?
あの姉上が、痛みと屈辱に歪んだ顔で鳴くのだ・・・・最もなんとも感じなかったが。
側室共もだ。箍が外れたように抱いてもなんとも感じなかった。
感じぬのはお前のせいだと、抱いた直後に切り捨てた。
・・・・・それでも次々に送られてくる。姉上は歪んだ嫉妬の唸りを上げては呪っておったよ。
どうでも良いことだが。





切り捨てた女の赤い血飛沫に、お前の顔が映って・・・・泣くのが見えて・・・・・
そのときだけ、お前の姿を見ることが出来て・・・・・
お前の姿を見たくて・・・女を殺さずに居れぬのよ・・・・
これ以上女を殺すのが嫌だというのなら、お前が私を殺して呉れ。
人殺しはもうたくさんだ・・・・・
お前は私を憎んでいるのだろう?
・・・・・・それとも私は、お前に殺される値打ちもないか?





また・・・・・おらぬのか・・・・・





足音が聞こえる・・・・
今度は殺してくれるのか?今までに何度も足音が聞こえたが・・・・
どやつもこやつも役立たずでな、斬ったら血を流してあっさり死ぬのだ・・・・・
今夜こそお前の足音か、お前の姿かと思うと、むさ苦しい男ばかりでがっかりするのよ。
私は、とことんお前に嫌われておるらしい・・・・
そういえば時々、殺した女の仇だとか言うのが混じっておったな。
ファラオに抱かれるなら本望だと言ってきた女が殺されて、かわいそうだと。
女の恨みを思い知れだと。
・・・・・笑うだろう?私はお前以外の女は要らぬのにな。
何の役にも立たぬファラオに抱かれたいと、自ら望んで来るのだぞ?
ああ・・・・そうか・・・お前が泣くのは殺された者たちにだな・・・・・そうだった・・・・
それでもお前が泣いているのを見ると、言わずにおれぬ。
・・・・・泣くな・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
皆はもう知っておるよ。ファラオは役立たずだと。
すでに次のファラオを立てようと、あちらこちらで火の手が上がっておるわ。
姉上が必死になっておるがな、もう時間の問題だろう。
・・・・・ああ、酒が切れたか・・・・・良い・・・・・もう良い・・・・・
・・・・・・・・・・誰か私を殺してくれ・・・・





                                                       ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





今夜は泣いておらぬのか?どうした?何が言いたい?
あの時どうして私を助けた?あのまま放っておいてくれれば死ねたのに・・・・
おかげでまた人を殺したぞ?お前の嫌いなひとごろしを、だ。
私は何人殺したら、お前のところへ行けるのだ?
・・・そうか、お前の側に行けぬのは、私が人殺しだからか・・・
・・・もしやお前、側へ来られるのが嫌で私にこんなことをさせているのか?
ならば自らの手で行ってやろう。はじめからそうすれば良かった。
そうすればこれ以上無駄な人殺しをせずにすんで・・・少しはお前に近づけるだろうから・・・・





                                                       ・・・・・・・・・・・!
                                                       ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





止めても聞かぬよ。
逃げても無駄だ。何処までもお前を追って行こう・・・・・そうしよう・・・・・
言ったであろう?お前は私だけのものだ。その魂までも私のものにして一つになろう。
そうすればお前はもう二度と私から離れぬし、
私はお前の嫌いな人殺しをせずに済む。





                                                       ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ
                                                       ・・・・・・・・・!・・・・・・・・・・・・・!





聞こえぬよ。
そこで見ておれ、すぐに済む。
ああ、少し離れて居れ、お前が私の血で汚れてしまう。
ふふ・・・・人を斬ったことはあっても、自分を斬ると言うのは初めてだな・・・・・





                                                       ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!
                                                       ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!





・・・・・・・・・・温かいな・・・・・血潮がこんなに温かいものだとはな・・・・・
・・・お前・・・そこで見てくれているか?
お前の嫌いな人殺しの血が・・・綺麗さっぱり流れ出したら・・・・全部棄てたらお前の側に行くから・・・・・
そんなに小さな顔では良く見えぬ。
なんだ?また泣いて居るのか?側に行って慰めてやろう。
そら・・・・・こうすれば・・・・・お前の姿が大きくなるな。
変だな・・・・血潮が流れてしまえば・・・お前の嫌いな人殺しの血が全部流れ出してしまえば
お前のところに行けるかと思ったのに・・・
・・・そこにいるのか?お前の姿が見えぬ・・・・どこに・・・・
せめて声を聞かせてくれ・・・・





                                                       ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!
                                                       ・・・・・やめて・・・・・・・・・
                                                       やめて・・・メンフィス・・・・・







ああ・・・・・・・・なんだお前・・・・・此処に・・・・・・いたのか・・・・・
つかまえたぞ・・・・・もう泣くな・・・・・・・・・
・・・・・もっと早く・・・・こうすれば・・・・よかった・・・・・・





                                                        END




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